自営業妻が夫の自営業を手伝い始めたときには注意が必要です。一般の企業に就職したときと同じつもりだと、いろいろな誤算が生まれます。何より、公私の区別がつきにくい自営業家庭ですら、仕事の手伝いがきっかけで、家族関係がギクシャクしてしまうことにもなりかねません。
私は自分勝手にやりすぎて夫と衝突しました
私が夫の自営業を手伝い始めたときは、本当に希望に燃えていました(笑)。私ががんばれば夫の仕事が飛躍する!わが家の家計も潤う!って信じていたからです。
まずは、以前から気になっていた、夫の経費の使い方を直そうとしました。それ以外にもいろいろと口出ししたのです。
高い工具を買おうとすれば、「今のがまだ使えるでしょ」とたしなめ、
仕事仲間とゴルフに行こうとすれば「そのお仲間さん。年間いくら仕事をくれるの?」と追求し、
仕事がないと家でゴロゴロする夫に「新規開拓の営業に出かければ?」とアドバイス。
どれもこれも、私が会社員時代に当たり前のように上から言われていたことを、夫にも言っただけ。当たり前のことを言っただけだから、夫もすぐに分かってくれるはずだと思っていました。
まあ、そこからが毎日「夫婦バトル」です。それはもう夫の反撃はすごかった。そして私も応戦しました(苦笑)。もう夫婦関係はギクシャクどころか崩壊寸前です。
今になって思えば、夫は妻の指示に従うような性格ではありませんでした。勤め人を辞めて独立したのも、この性格が要因だと思います。会社から指示されて動くのが嫌なのね。自由でいたい人なのです。
さらに、一人目の子どもが生まれた頃で、私は会社員をやめて専業主婦になり、子育てをするという新しい環境になったばかり。特に子育てはあまりにも自分の自由がなくなってしまい、その環境に対応しきれていませんでした。子育てに専念する覚悟が足りませんでした。
隣に住む夫の両親が一人目をとてもかわいがってくれて、毎日のように子守をしてくれました(というか勝手に連れて行ってしまうのですが)。それをいいことに、私は税務署主催のセミナーへ出かけたり、一度だけですが友達とランチを楽しんだりしてしまい・・・。いろいろ重なって嫁姑問題に発展しまったのです。
とどめに、リーマンショックで派遣切りが騒がれた頃で、夫の仕事もなくなり収入も落ち込んでいました。
この「夫の反撃」「嫁姑問題」「収入の減少」という3つのことが重なり、私の人生の中の暗黒時代に突入してしまったのです。
そして結婚5年目で二人目を出産するまで、いろんなバトルを経験し、コレは私が一歩引かないとやっていけないということに気づいたのです。夫婦バトルは終止符を打ちました。私が引いて、我慢すれば、大きなバトルにはなりませんから。
夫婦バトルはなくなったものの、私は悶々とした日々を過ごします。結局、夫は自由なままで、私だけが我慢する生活のように思えたからです。
自分のテリトリーに口出しされるとカチンとくるよね
私は不満を抱えていましたが、夫の仕事は順調で、それなりに平穏な毎日を過ごしていました。三人目の妊娠中に夫が家事を手伝ってくれたことから、私は自分が夫にしてきたことの間違いに気づくことになったのです。
普段は家事をまったく手伝わない夫が私のつわりの間、夕食後の食器洗いをしてくれていました。今まで何もしない人だったので、私はありがたいなぁと思いながらも、なんだか落ち着きません(笑)。
手伝ってもらうことに慣れていなくて、夫が食器洗いをしている間にのんびりするなんて出来ませんでした。結局、夫の後ろとフラフラと歩いてみたり、様子を見たり(笑)。
すると、夫は私の家事にダメだしをするのよ。まずは食器を洗った後に、水道の蛇口を磨き始めたの。きれいに乾拭きをしてピカピカに光らせて完了。「蛇口がピカピカだと気持ちがいいだろ」ですって。
確かにね。私は蛇口は毎日磨きませんけどね。なんだかムカつくわ。
次に、キッチンの引き出しの中にまで口出しをしてきた。引き出しの中には小分け用にトレーが入っていたのですが、夫は中身を取り出して、そのトレーをきれいに洗ったの。「こういうところの汚れって気にならないの?」ですって。
毎日見ていると視界の外に行っちゃうのよ。こういう細かい汚れはさ。やっぱりムカつくわ。
最後に、収納方法にまで口出しをしてきた。私はスプーンとフォークを分けて収納していたの。でも夫は子供用と大人用で分けて収納したほうが便利だと言うのよね。そうすれば「子供に渡すときにすぐに取り出せて便利だろ」ですって。
どんな風に収納するかまでイチイチ口出しするな~!って私はもうカチンときちゃいました。
今まで家事を手伝ってこなかったくせに~!つわりの間にチョコっと手伝ったぐらいで、今までずっとやってきたかのような口ぶりで、上から目線で口出しするなんて!本当にムカつく~!っとなったわけ。
そして気づいたの。私が夫の自営業を手伝い始めたときに、夫が反撃してきたのは、コレが原因だって。
新入社員と同じ気持ちで、1年間は我慢して指示を待ちましょう
新入社員の頃は、先輩や上司に意見などせずに、黙って従うものです。間違っているよなぁと思っても我慢した経験が誰にでもありますよね。
自営業ですと、先輩や上司に当たるのは夫になるわけで、どうしても遠慮がなくなってしまいます。新入社員のような謙虚な気持ちが足りなくなってしまうのです。
やる気があればあるほど空回りして、夫婦仲まで悪くなってしまったら、何のためにがんばってきたのか分からなくなってしまいますよね。もし、夫の両親や親族が一緒にやっている自営業だったらなおさら、人間関係には気をつけなければなりません。
仕事を手伝って、夫婦仲が悪くなって、仕事場も家庭も居心地が悪くなってしまうのが自営業家庭の辛いところです。逃げ場がありません。愚痴をいう相手もいません。
そうならないためにも、1年はぐっと我慢して夫の指示に従うだけに徹したほうがいいのかなぁと思います。やりたいことや改善したほうがいいことは、心の中にしっかりとメモしておくのです。すぐには実現できなくても、きっといい機会がやってきます。
指示をだすということは、それだけで勉強になるものです
世間では「指示待ち族」になってはいけない!とよく言われます。確かにそうです。もっともです。でも、自営業なら夫のためだと思って我慢するのがいいときもあります。
私は会社員時代に後輩を指導する立場になったことがありますが、本当に苦労したし勉強になりました。学生時代の勉強でも、自分が勉強して、人に教えることで理解が深まるといわれたことを思い出します。人に教える、指導するというのはその人にとってよい経験になるのもです。
夫が妻に仕事を教えるということは、夫が今までの仕事を振り返るチャンスでもあるわけです。人に教えてみて、「経理の方法が教えられるような体系になってない」とか、「書類の管理はキチントしておいたほうがいい」とか、気づくことが多いことでしょう。
わが家の場合、夫の頭の中にしかない情報が多すぎます。一人で仕事をしていたときはそれでよくても、複数で仕事をするとなると情報の共有化が不可欠です。聞き出すだけでも苦労するというのは無駄な労力だと感じます。
妻が指示待ち族になることによって、夫は自分からアウトプットをする必要性を感じられるはずです。指示をだしたり指導することは大変なこと。だから、夫にはそれはしてもらうのです。それぐらいの気持ちで、夫の仕事に口出しするのは我慢我慢です。
これから夫婦で仕事をしていく上では、この指示待ちの1年がいい基礎になると思います。私も何でも夫に相談して確認してから物事を進めるようになってから、本当にスムーズに仕事が出来るようになりました。面倒だと思っても何でも相談します。意見を聞きます。我慢して従います(笑)。
夫の仕事を手伝う上で一番必要なのは「忍耐」かもしれません。